アブラハム契約は、旧約聖書の中でも特に重要な契約の一つで、神がアブラハム(もとは「アブラム」)にカナンの地と子孫を約束し、彼を信仰の父とすることを決定されたものです。この契約には、神の導き、祝福、土地と子孫の永続的な約束が含まれ、アブラハムの生涯と信仰に深く関わる出来事が描かれています。創世記12章から17章にかけて、神は繰り返しアブラハムに現れ、彼の信仰の旅と使命を示されました。
神は、アブラム(後のアブラハム)に対して最初の召命を下します。これは、アブラムがまだカナンの地を知らず、異教の文化の中で生活していたときに行われました。
ここで神は、アブラムに故郷ハランから出て行き、神が示す地(後にカナンの地と分かる)に向かうよう命じました。この命令には、自分の家族、親族、土地を離れるという困難な決断が伴いましたが、アブラムは神の約束を信じ、神への絶対的な信頼を示します。神はアブラムに、大いなる国民の祖となると約束されました。
アブラムは、彼の家族や家畜を連れて旅を開始し、最終的に神が与えるとされたカナンの地に到着します。神はこの地で再びアブラムに現れ、この地を彼の子孫に与えると約束しました。
神がアブラムに現れ、「あなたを大いなる国民とする」という約束を与えられた時点で、アブラムにはまだ子供がいませんでした。時間が経つにつれて、アブラムと妻サライは、神の約束が果たされるのを待つ間に信仰が試されます。
アブラムは神に、自分には相続人がなく、彼の財産は従者のエリエゼルに渡されるだろうと話します。すると神は、アブラムの子孫が星の数のように多くなることを再び約束され、彼を励まします。
この言葉に対して、アブラムは神の言葉を信じ、その信仰が彼に「義」として認められます。
この場面は、アブラムの信仰が神の目に義とされた瞬間として、後の新約聖書でも重要な意味を持つものとなりました。
神は、アブラムとの契約を正式に確立するため、動物を分割していけにえとして捧げる儀式を命じます。アブラムは神に従い、神がこの契約を保証するために奇跡的な出来事を行われました。
神はまた、彼の子孫がエジプトで異国の民の奴隷となるという予言を示し、その後に解放されて豊かにされることも約束されました。この儀式によって、神のアブラムに対する約束は確固たるものとされ、永遠の契約として受け継がれるものとなりました。
アブラムの妻サライは、神の約束がなかなか実現しないことに焦りを感じ、彼女の女奴隷ハガルをアブラムに与えて子を設けさせることを提案します。この提案により、ハガルはアブラムとの間にイシュマエルを産みますが、この行動が家庭内に問題を生じさせました。
イシュマエルは神から祝福を受けるものの、神は後にアブラムに、約束の子はサライとの間に生まれるイサクであると告げます。
アブラムが99歳になったとき、神は再び現れ、彼とその子孫との契約のしるしとして「割礼」を行うよう命じました。この時、神はアブラムを「多くの国民の父」を意味する「アブラハム」に、そして妻サライを「多くの国々の母」とする「サラ」に改名されました。
さらに、神はサラが「約束の子」であるイサクを産むことを告げ、アブラハムはその契約の証として彼と彼の家のすべての男子に割礼を施します。
この契約のしるしである割礼は、イスラエルの民において重要な宗教的な儀式として守られることになります。
アブラハム契約は、彼とその子孫が神との特別な関係を持つことを意味し、後のイスラエルの民にとって信仰の基盤となりました。この契約は、神が人類に対する救いの計画を進めるための土台として、また、信仰に基づく義と神の救いがアブラハムの子孫に留まらず、全ての人々に広がることを示しています。
このアブラハム契約は、彼が信仰によって義とされ、神の約束に完全に従った結果生まれたもので、後にイスラエル民族、そして全人類に対する神の救いの約束が示されることにつながります。