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マソラ写本とは何か?—ユダヤ教聖典の伝統と正確性の極致
はじめに
「マソラ写本(Masoretic Text)」は、私たちが今日「旧約聖書」と呼ぶヘブライ語聖書の最も信頼されている写本伝統です。特にユダヤ教においては、このマソラ写本こそが神から与えられた正典であり、その写本体系は千年以上にわたって驚異的な精密さをもって守られてきました。本記事では、マソラ写本の歴史、特徴、内容、そして他の聖書写本との比較を通して、その重要性を詳しく解説していきます。
「マソラ(Masora)」とは、ヘブライ語の「マソーレート(מסורת, masoret)」に由来し、「伝承」または「口伝」といった意味があります。つまり、「マソラ写本」とは、ユダヤ教の伝統的な聖書本文を正確に書き写し、伝承してきた写本群を指します。
マソラ写本は、主に6〜10世紀の間に、ティベリア地方(現代のイスラエル北部)にいたマソレテス(Masoretes)と呼ばれる学者たちによって編纂・整理されました。彼らの目的は、聖書本文の一字一句を正確に保存することでした。
元々、古代ヘブライ語聖書は子音だけで書かれていました。マソレテスたちは、正しい発音と読み方を伝えるために、独自の母音記号(ニクダー)を開発し、本文に加えたのです。これにより、ユダヤ教の礼拝や教育において、読み間違いや誤解釈が防がれました。
マソレテスたちは、本文の横や下に「マソラ小注」「マソラ大注」と呼ばれる注釈を加えました。これには:
特定の単語が聖書全体に何回出現するか
書き間違えやすい文字の位置
読み替えるべき箇所(ケティブ/ケレ)
などが記され、写し間違いを徹底的に防ぐシステムになっています。
最古級で最も信頼されていたマソラ写本の一つ。ティベリアのマソレテス、アハロン・ベン・アシェルによって編纂されたとされます。一部が失われているものの、現在でも研究に多く引用されます。
現存する最古の完全なマソラ写本。アレッポ写本と同じ伝統に属し、今日のほとんどのヘブライ語聖書の基礎テキストになっています。
比較対象 | 内容 | マソラ写本との違い |
---|---|---|
七十人訳聖書(LXX) | ギリシア語訳旧約聖書 | マソラ本文より古い翻訳で、新約聖書の引用元にも使われたが、内容に若干の差異あり |
死海写本 | 紀元前2〜1世紀の写本群 | マソラ本文より古く、一部で本文の違いが確認される |
サマリア五書 | サマリア人によるモーセ五書の写本 | 一部語彙や神殿中心の解釈が異なる |
※ こうした違いが存在するにも関わらず、マソラ写本の精度と保存性は学問的にも高く評価されています。
キリスト教の旧約聖書も、今日では多くがこのマソラ写本に基づいています。ただし、カトリックや正教会では七十人訳聖書(LXX)をより重視する場合もあります。新約聖書に引用される旧約聖句が七十人訳に近いものが多いためです。
現在、学術的なヘブライ語聖書の標準版であるBiblia Hebraica Stuttgartensia(BHS)および新しいBiblia Hebraica Quinta(BHQ)は、いずれもレニングラード写本を基礎に編集されています。
多くの近代的な聖書翻訳(例:新共同訳、新改訳、NIVなど)は、マソラ写本を中心に参照しながら翻訳されています。
マソラ写本は、単なる「古い聖書の写本」ではありません。それは、神の言葉を1文字たりとも誤らず伝えようとしたユダヤ人たちの信仰と学問の結晶です。この驚くべき保存体系があったからこそ、私たちは今、数千年前に語られた神の言葉をほぼ原型のまま受け取ることができるのです。
参考文献
・ Emanuel Tov, Textual Criticism of the Hebrew Bible
・Ernst Würthwein, The Text of the Old Testament
・Biblia Hebraica Stuttgartensia (BHS)
・The Dead Sea Scrolls Bible
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