1. マタイの背景
マタイは、イエス・キリストの12人の使徒の一人であり、元々は税収を管理する税吏でした。彼はガリラヤ地方のカペナウムに住んでおり、ローマ帝国に仕えるユダヤ人税吏として働いていました。この職業は、ユダヤ人からしばしば軽蔑され、社会的に排斥されがちなものでしたが、イエスは彼を選び、使徒として召しました。マタイは、イエスの弟子となり、彼の教えを広める使命を担いました。
「イエスはそこを去って、マタイという名の人が、税関に座っているのを見て、『私に従いなさい』と言われた。彼は立ち上がって、イエスに従った。」(マタイ 9:9)
2. マタイの召命
マタイの召命は、彼の人生における大きな転機でした。彼は税収を取り扱う立場にありましたが、イエスの呼びかけに応じて、その職を捨て、彼に従う決断をしました。マタイは、イエスが食事を共にする場面を通じて、罪人とされる自分に対するイエスの無条件の愛を実感し、それが彼の信仰の始まりとなりました。
「イエスがその家で食事をしていると、多くの徴税人や罪人たちが来て、イエスと一緒に食事をした。これを見たファリサイ派の人々は弟子たちに言った、『なぜあなたがたの先生は、徴税人や罪人たちと一緒に食事をするのか』」(マタイ 9:10-11)
3. 福音書の著者
マタイは「マタイによる福音書」の著者であり、この書は新約聖書の最初の福音書として位置づけられています。マタイは、イエス・キリストの生涯や教えを、特にユダヤ人に向けて記録しました。彼の福音書には、旧約聖書の預言が成就したことを示す多くの記述があります。
「この全てのことが、主が預言者を通して言われたことが成就するためであった。」(マタイ 1:22)
「彼は民の罪を赦すために来られた。」(マタイ 1:21)
4. マタイの教えとテーマ
マタイの福音書は、イエスの教え、奇跡、たとえ話に焦点を当てています。特に「山上の垂訓」では、イエスが天の国の倫理を教えており、信者に対して愛と慈しみをもって生きることを説いています。ここでは、神の国の原則と倫理が強調されます。
「あなたがたは、幸いである。心の貧しい者は、幸いである。天の国は彼らのものである。」(マタイ 5:3)
「あなたの隣人を自分のように愛しなさい。」(マタイ 22:39)
「あなたがたが人々にしてもらいたいと思うことは、何でも、人々にもそのようにしなさい。」(マタイ 7:12)
5. イエスとの関係
マタイは、イエスの弟子として、彼の教えを直接受け取り、また彼の働きを目撃しました。彼はイエスの奇跡や教えを通じて、神の国の現実を深く理解し、これを福音書に記録しました。イエスとの親しい関係は、彼の信仰の根幹をなしていました。
「イエスは言われた、『わたしがあなたがたに命じたすべてのことを守るように教えなさい』」(マタイ 28:20)
6. 終末の教え
マタイは、イエスの復活後に行われた大宣教命令を記録しています。この命令は、全ての国の人々に福音を伝える使命を信者たちに与えたものであり、教会の使命を象徴しています。
「あなたがたは全世界に出て行って、すべての国の人々を弟子にしなさい。彼らに父、子、聖霊の名によってバプテスマを授け、私が命じた全てのことを守るように教えなさい。」(マタイ 28:19-20)
7. マタイの遺産
マタイは、福音書を通じてイエス・キリストのメッセージを後世に伝え、クリスチャン信仰の基盤を築く重要な役割を果たしました。彼の記述は、教会の信仰に影響を与え、今日でも多くの信者に感銘を与えています。
「見よ、私は世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいます。」(マタイ 28:20)
このように、マタイは税吏から使徒に転身し、福音書の著者としてイエス・キリストのメッセージを広める重要な役割を果たしました。彼の生涯と教えは、信者たちに大きな影響を与え続けています。