1. レアの登場と背景
レアは旧約聖書の『創世記』に登場する人物で、ラバンの長女、ヤコブの最初の妻、そしてラケルの姉にあたります。彼女は妹のラケルとともにラバンの家で育ちましたが、外見においてはラケルと対照的でした。聖書はレアについて「弱い目を持っていた」と記しており、そのためラケルのように容姿で注目を浴びることはありませんでした。
「レアは目が弱々しかったが、ラケルは美しく、顔も姿も麗しかった。」(創世記29:17)
ヤコブはラケルと結婚することを望み、ラバンに7年間仕えることを申し出ますが、結婚の夜、ラバンはヤコブを騙してレアを妻として送り出しました。翌朝になってヤコブは気づき、ラバンに問いただしましたが、ラバンはその土地の習慣として「姉妹のうち、先に長女が嫁ぐのが決まりだ」と説明します。
「朝になってみると、それはレアであったので、ヤコブはラバンに言った。『どうして私にこんなことをしたのですか? 私はラケルのためにあなたに仕えたのではありませんか?』」(創世記29:25)
2. レアの苦悩と神の慰め
ヤコブはラケルを愛していたため、レアは家庭内で孤独を感じていました。しかし神はその苦しみを知り、彼女に子供を授けることで慰めを与えます。最初の子供、ルベンの名前には「主がわたしの苦しみを見られた」という意味が込められ、レアの心情が反映されています。
「レアはみごもって男の子を産み、その子をルベンと名づけて言った。『主が私の苦しみをご覧になったからだ。今こそ夫は私を愛するようになるだろう。』」(創世記29:32)
次にシメオン、レビ、ユダが生まれ、特にユダの名前には感謝と神への賛美が込められています。レアは最終的にヤコブに6人の息子と1人の娘を産み、イスラエルの十二部族のうち半数を担う存在となります。
「彼女はまたみごもり、男の子を産んで言った。『今度こそ私は主をほめたたえよう。』彼女はその子をユダと名づけた。」(創世記29:35)
3. レアとラケルの競争
レアが多くの子供を授かった一方で、ラケルは不妊に悩みました。二人の姉妹はヤコブの愛を得るために競い合い、ラケルが侍女ビルハを通してヤコブに子供をもうけると、レアも自分の侍女ジルパを通じてさらに子供を得ました。この競争は次第に激しくなり、複雑な家族関係を生み出しました。
「レアは自分がもう産むことができないのを見て、女奴隷ジルパを夫ヤコブに与えた。」(創世記30:9)
また、レアは息子のルベンが「マンドレイク」という植物を見つけてラケルに渡した際、ラケルとの間でその取り引きが行われ、レアは再びヤコブとともに時を過ごす機会を得ました。
「ラケルはレアに言った。『どうか、あなたの息子のマンドレイクを私にください』」(創世記30:14)
この出来事により、レアはイッサカルとゼブルンをさらにもうけました。
4. レアの役割とイスラエルの歴史への影響
レアの子供たちは、後のイスラエルの十二部族を形成する祖先となり、特にユダはダビデ王家の祖先であり、最終的にメシアであるイエス・キリストがこの系譜から生まれることになります。彼女の息子レビからは祭司の一族であるレビ族が出ました。こうした点から、レアはイスラエルの歴史において非常に重要な人物とされています。
「ユダよ、兄弟たちはあなたをたたえる。あなたの手は敵の首を握り、父の子らはあなたの前にひれ伏す。」(創世記49:8)
5. レアの晩年と埋葬
ラケルがベツレヘム近くで亡くなり、別の場所に埋葬された一方で、レアはヤコブの最終的な墓所となるマクペラの洞窟に埋葬されました。これは、彼女がヤコブの正式な妻として尊重されたことを示しています。ヤコブが臨終の際にレアの隣に葬られることを選んだのは、彼女の存在が家庭において重要なものであったことを象徴しています。
「彼らはマクペラの畑の洞窟に彼(ヤコブ)を葬った。この洞窟はアブラハムがヘテ人エフロンから自分の所有の墓地として買い取ったものである。」(創世記49:31)
レアの物語は、彼女がどれほど苦悩しつつも、神がその苦しみに応え、彼女に祝福を与えられたことを示しています。イスラエルの十二部族の半数以上の母としての役割を担い、彼女の信仰と献身は神の大いなる計画に組み込まれました。